一昔前は不妊の原因は女性にあるという印象が強かったのですが、最近の研究では「不妊の原因が男女どちらかにあるか」という割合は約半数ずつであると分かっています。
しかし、まだまだ男性の不妊治療についての情報は不足していると言っても良いでしょう。
この記事では特に男性不妊に着目し、その理由や治療法について解説していきます。
男性に原因のある不妊もある
女性の不妊の原因は、ホルモンバランスの乱れ・子宮の問題・卵子の問題・排卵の問題など多岐にわたりますが、男性の不妊原因の大半は精子をつくる器官にあります。
造精機能障害
精子は精巣でつくられますが、この機能が低下してしまうと健康な精子を十分な数生産できなくなります。
この状態を「造精機能障害」と言いますが、造精機能障害は精子中に一つも精子がない無精子症・精子の運動能力が不足している精子無力症・精子の数が少ない乏精子症・奇形の精子が多い精子奇形症に分かれます。
また無精子症の場合には、精液中に精子がいなくても精巣や精巣上部には精子が存在している「閉塞性無精子症」と、精子がどこにもいない「非閉塞性無精子症」の2種類があります。
精路通過障害
精子が通るべき精路に問題があると精子を運ぶことができません。精路通過障害は先天性の場合と、クラミジアなどの感染症によって精路が詰まってしまうこともあります。
性機能障害
勃起や射精が困難な状態になってしまうことを「性機能障害」と言います。性機能障害は原因が複雑であり、ストレスや疲れが関係していると言われています。
男性の不妊症は他人事ではない
WHOが実施した不妊症原因調査では、不妊の原因は男性のみ24%・女性のみ41%・男女両方24%・原因不明11%となっており、男女ともに原因がある場合を各数字に足すと、男性のみ48%・女性のみ65%という結果になります。
不妊治療は、女性だけが行っても効果が得られない可能性が高いと言えますね。
夫は不妊治療に前向きでないという話を聞くことがありますが、まずは夫婦の意見を一致させる必要があるでしょう。
男性の不妊治療はどのように行われる?
男性の不妊治療も女性と同様に、まずは検査で原因をはっきりとさせることから始まります。特に男性の場合は女性のように、月経周期に合わせた検査が必要ではないので、比較的短期間で検査を完了できるでしょう。
ここでは代表的な原因別の治療方法を紹介します。
乏精子症・精子無力症の治療
精巣などに静脈瘤(静脈の拡張)があると、精巣の温度が上昇してしまい精巣萎縮などにつながります。
そのため静脈瘤が認められなければ薬物療法が一般的ですが、静脈瘤がある場合には手術が行われることが多いです。
静脈瘤の手術は方法によっては局所麻酔になりますので、日帰り手術が可能になっています。
無精子症の治療
閉塞性無精子症の場合は、顕微鏡下精路再建術または射精切開術などの手術をします。手術をしても精子が出現しない可能性もあるため、同時に精子の冷凍保存が行われることが多いです。
性腺発育不全の可能性がある時には、ホルモン治療を実施します。
性機能障害
治療には薬物療法が一般的ですが、糖尿病などの内分泌疾患が理由となっている事が考えられる時には、不妊治療以外の検査が必要なこともあります。
まとめ:男性不妊の理由や治療方法について
男性の不妊について未だ知られていない部分も含めて、治療方法や内容を紹介いたしました。
男性に理由があって不妊治療を実施する場合も、女性の年齢が高齢の場合は、男女同時に不妊治療を開始することが多いようです。夫婦でしっかりと足並みを揃えて治療する必要がありますね。